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津波に耐えたマツ林とイブキ 被災地調査後編

福島の海岸線は、国営の防潮林が縁取っています。

そこで南下しながらその状況を確認し、単木の樹木の被害の有無も知りたいと思いました。

地図には津波が広がった箇所が記されていました。衛星写真で確認し記録したものだそうです。
http://danso.env.nagoya-u.ac.jp/20110311/

岩手の陸前高田市では壊滅的な被害で何千本もあった松がたった1本残ったニュースは皆さんよくご存知だと思います。
あそこのマツはすでに多くの専門家が入り込んでいて、えらい先生方が何人も船頭をしているそうで、私たちが出る幕は無いんです。
地表を波で洗われ、根が傷み、かなり危ない状況だと聞いています。
もし、根が露出していなければ、復活する力は残されています。

福島の海岸林は、岩手ほどの衝撃ではなかっため、塩害で真っ赤になりながらも陸地を守る機能を果たしていました。
瓦礫を食い止めている様子がわかります。
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家屋の破壊については、明暗がくっきり現われていて、住宅は林の裏手に立てたほうがいいことが一目瞭然でした。
ある地域ではわざわざ防潮林だったところを宅地に変えてしまったそうで、跡形も無く、基礎だけが残っている場所もありました。
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塩害とは、塩の分子が根を傷め通水障害を起させたり、直接葉を痛めることです。組織が破壊され、正常な生育ができなくなっていします。

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スギに関しては完全に塩に弱いです。真っ赤な雑木林に驚きました。
この雑木林の裏手、南横手地区で農業法人を営んでいる女性に話を聞くと、田んぼも畑もすっかり波に覆われて、高さ40センチほどの冠水があったそうです。

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無農薬栽培の許可をとった直後の出来事で、とてもショックだったとのこと。
塩を抜くために田んぼに水を張って処置しますが、大変な作業です。本当にお見舞い申し上げます。
しかし、雑木林がかなりの津波を減衰したとのことです。そのおかげでよそほどはなかったとのこと。やはり植林は重要ですね。


そして下層植生がしっかりしているところは比較的被害が少なかったですね。
ハマヒサカキ、トベラ、シャリンバイ。これらの下草との組み合わせが効果があるようです。さらにイブキを組み合わせれば完璧じゃないでしょうか?

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意外だったのは、タブが全くダメだったと言うこと。確か海岸に適した植物なんですが、実はそうでもなさそうです。葉が全部枯れていました。

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さらに意外だったのはヤマザクラです。ぴんぴんしています。
といっても津波が起きたのは3月なので、ある意味不幸中の幸い。
葉が出ている樹木の活動期だったらアウトだったでしょう。

そして、われわれはこのソメイヨシノは大丈夫だったのか確認しました。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110409/trd11040917170005-n1.htm


津波を被った旧小名浜測候所のソメイヨシノです。今は税関の敷地になっていて、
近くに寄らせてもらえませんでした。

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少しはなれたところから見た限りでは、全く問題なさそうです。
ここも地表面が雑草で覆われていたのが功を奏したのでは無いでしょうか。

植栽と言うのは、組み合わせが大きな差を生むと言う大切なことを改めて学びました。
このサクラも咲き続けて、被災地の希望として、語り部として元気に生き続けて欲しいですね。

マツ防潮林の効果は改めて重要だと今回の震災で再認識されているそうです。

しかし、ダメージを受けた跡に虫や病気が入る恐れが十分にあります。弱ればマツノザイセンチュウの格好の餌食です。これから夏を向かえ、どの程度持ちこたえるのか十分な観察が必要です。

そして問題なのは、最近ではマツの人気がなく、苗木が不足しているとのこと。
コレは大変です。なので、他の樹木との組み合わせを併用していくことでしょう。

マツもちょっとかわいそうですね。

子供の頃は、海水浴で浜辺の松の葉がちくちくしてちょっと嫌だなあ、なんて思っていました。
でも本当はものすごい役割を担っていたのですね。
私たちが住む美しい日本。それを守る最前線で文句も言わず波に洗われ潮風にさらされています。なんだかマツとイメージが重なって、防人の歌を思い出してしまいました。

立ちわかれいなばの山の峰に生ふる松とし聞かばいま帰り来む

作者:在原行平(古今集)
意味: 皆に分かれて因幡の国に行ったならば、その国の稲羽山の峰に生えている松という名のように、皆さんがわたしを待つと聞いたならば、すぐに帰って来ましょう。

岬の遠くに原発の煙突らしきものがかすんで見えました。
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打ち寄せる波はや海原の美しさは変わらないのに、以前のものとは違い世界に心配をかけてしまう海となってしました。
浜辺のハマエンドウやヒルガオは、震災の名残を微塵も見せず逞しく咲いています。

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自然に対する人の手の入れようは、決して奢ってはいけない。こんなに頑張っている樹木たちに甘えすぎないよう気を引き締めたいと思うのでした。

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津波に耐えたマツ林とイブキ 被災地調査前編

東日本大震災から3ヶ月が過ぎました。
まだまだ多くの方が大変な生活を送っていらっしゃるところだと思います。
重ねてお見舞い申し上げます。

先日やっと、わたしたちも、NPOとして今後の支援活動の方法を考えるべく、被災地を調査してきました。
多くはまず生活の復旧のための支援ですが、当会に御協力いただいている方からも、我が会ならではの支援をした方がよいのでは、とすすめられ、被災地の樹木や自然を保護して守るプロジェクトを進めたいと考えています。

すでに高田の松原の1本マツは多くの専門家が取り組んでいます。支援の手も多くあるだろうということから、私たちは福島のほうに目を向けることにしました。
原発の問題もあるし世界的に福島は大変心配されているところです。
放射能の影響についてははっきり言って現段階ではまったくわかりません。
今回は津波での塩害を中心に、国営林の被害などを見て回ることにしました。

いわき駅に着いたら、立派で大きくて新しくて、震災の影響を全く感じさせない様子でした。
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私たちはまず久之浜町方面に北上し、海岸線を確認することにしました。
車で移動していくと、瓦礫の山が積んであったり、1階だけ崩壊している家屋、転がった船、営業していない旅館など、やはり震災のつめ痕が確かにあるのがわかります。

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今回の被害をまとめた地図を頼りにします。

国土地理院
http://danso.env.nagoya-u.ac.jp/20110311/

コレを見ると不思議なことに、殆どの神社やお寺は津波を見事に避けている場所に立地しています。まさにぎりぎりのラインを取っているのです。
長い歴史で神社やお寺は災害が及ばない場所をちゃんとわかっているのだとしか思えない現象ですね。

そして、最初からすごいものに出会いました!


イブキの大木です。これほど大きいのはそれだけで珍しいのに、なんと津波を被っているのにも関わらず全く無傷で元気いっぱいなのです。
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イブキ(伊吹、学名:Juniperus chinensis)は、ヒノキ科ビャクシン属の常緑高木

ここにも目立たないけど大災害を乗り越えた勇者がいたんです!

周囲のマツはすっかり真っ赤なのですが、イブキは本当に津波を被ったのだろうか?と思わせる様子です。
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近所のおじさんに話を聞くと、確かに7メートルものの津波が押し寄せたそうです。
始めは「人の不幸を取りに着たのか?」と言ってたおじさんも、私たちが樹木の調査に来たのだとわかると、イブキのことを称えていました。

実はコレほどまでに潮に強いとは全然認識していませんでした。イブキさんゴメンナサイ。本当に見事なイブキです。

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その側には「息吹樹」という飲食店がありましたがもちろん閉店中。
お店を津波が直撃した痕があります。
息吹樹の名のとおり、あらたに息を吹き返して欲しいですね。

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この側にあった波立(はったち)神社もイブキが見事でした。
被害が少なくて驚きです。

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ツワブキにハマヒサカキ、シャリンバイ。潮に強いおなじみの植物はしっかり生育しています。知ってはいたけど改めて凄さを感じました。

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これから災害に強い街づくりに、寺社仏閣をキーポイントとして見直すのは案外必要なんじゃないかと思いました。


被災地樹木調査は、まずは、力強いイブキが出迎えてくれて、私たちはかなり希望を持ちました。

後編に続く

RIKCAD 植栽ユニットデザインのご紹介 樹木医による植栽デザイン♪

当NPOでは、ご支援いただいております株式会社リック様より業務委託を受け、
CADで使える植栽ユニットデザインを作りました。


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樹木医の知識や技術は、樹木を治療すること以外にも色々役立ちます。

樹木の性質を知れば樹にとっても心地よく、美しい景観が作ます。

たまに見かけるのは、ちょっと無理した計画。

日陰に日向向きの樹木。その反対にカンカン照りのところに日陰の樹木。

狭いところに大木になる樹。

南国のものと北国のもの。

乾燥が好きなものと湿ったところ向きのもの。

ばらばらの組み合わせだと管理も難しいし、なんとなくデザインも揃わないような・・・。



と言っても一つ一つ調べるのもなかなか大変だし、やっぱりイメージ優先のほうが見栄えもいいし。

などなどデザイナーさんたちのお悩みがあるかと思います。


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この植栽ユニットデザインは、そんなお悩みを解消するべく作られたもので、

現場で使いやすいようイメージ別にデザインを分けて、樹木の生理生態を大事にしながらそのイメージに合う

植栽の組み合わせをデザインしました。


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よかったら是非一度ごらんになってください。

緑の業界がより豊かになるよう、これからもFTNは頑張って貢献したいと思います。


株式会社RIKは、NPO法人フォーエバーツリーネットワークをご支援いただいている企業様です。

  http://www.rikcorp.co.jp/